「通信あけのほし」278号を発行しました
支援者向けニュースレター「通信あけのほし」278号(7月25日号)を発行しました。
最新号の278号(2024年7月25日号)より巻頭言を以下に掲載します。
巻頭言 すべてを包み込む目 菊地功(きくち いさお)
夏になると、6月23日の沖縄慰霊の日に始まり、広島・長崎の原爆忌を経て、8月15日に至るまで、戦争の記憶をたどり平和を祈る機会が普段よりも多くあります。もうあれから79年です。
残念ながらこの数年、世界各地で戦争や武力攻撃はやむことなく、多くの命が、危機にさらされています。ウクライナやガザでの悲劇的な状況。隣人であるアジアの現実から言えばミャンマーのクーデター後の混乱。わたしたち人類は、過去の過ちから学ぼうとせず、命を危機にさらし続けています。
教会は、神が与えられた賜物であるわたしたちの命が、その尊厳を守られ、十全に生きることができる状態を平和と考えています。そうであるならば、いまの世界には、戦争や武力の行使にとどまらず、ありとあらゆる命に対する暴力が存在しており、だからこそ平和が確立していないことに気がつきます。
残念ながらこの世界で起こるそういった命を危機にさらす出来事は複雑に関係しながら発生し続けており、社会の現実は複雑さを極め、シングルイシューへの対処だけで解決することは不可能です。総合的な視点が不可欠です。
教皇フランシスコは、2017年に、それまであった難民移住移動者評議会や開発援助評議会、正義と平和評議会など、社会の諸課題に取り組むバチカンの部署を統合し、「人間開発省」を創立されました。
この「人間開発省」の正式な名称には、先頭に「インテグラル」と言う言葉がつけられています。「総合的」と翻訳しています。つまり「総合的人間開発省」が正式名称です。
教皇フランシスコは、2015年に主に環境問題に関する文書、「ラウダート・シ」を発表されたとき、第四章のタイトルを「インテグラル・エコロジー」とされました。
教皇フランシスコは、その「ラウダート・シ」に、「あらゆるものは密接に関係し合っており、今日の諸課題は、地球規模の危機のあらゆる側面を考慮することのできる展望を求めています(137)」と記します。
いま、必ずしも希望に満ちあふれているとは言えない世界の現状を目の当たりにして、神が賜物として与えられたすべての命が、一つの例外もなく、誰も忘れられることなく、誰も排除されることなく大切にされる世界を実現しようとするとき、わたしたちは、社会の現実を総合的な視点、つまり「すべてを包み込む目」で見ることが、大切ではないでしょうか。