ニュースレター「通信あけのほし」
当館支援者向けに年4回、ニュースレター「通信あけのほし」を発行しています。
※ご支援については「ご支援のお願い」をご覧ください。
最新号の273号(2022年4月18日号)より巻頭言と館長挨拶を以下に掲載します。
巻頭言 教会の卒業式 理事長 菊地功(きくち いさお)
3月は卒業のシーズンです。様々な段階の教育機関で卒業式が行われますが、カトリック教会の司祭を養成する学校、「神学校(しんがっこう)」でも同様です。
司祭養成学校での卒業式とは、まさしく司祭になる儀式のことで、叙階式と呼ばれています。なぜ「叙階」と呼ぶのでしょう。カトリック教会では助祭に始まって司祭、そして司教と段階
を踏んだ聖職者の序列があり、そのうちの一つの段階を授けられることから、叙階と言います。ですから司祭だけではなく助祭も司教も、叙階されます。
勲章を授ける叙勲などと同じ「叙」の字を使うのは、助祭や司祭や司教は人間が生み出すものではなくて、神からの選びであり、神から与えられる役目だと考えているからです。こういう選びのことを、「召命」と呼んでいます。この漢字は「命を召す」という、なんとなく物騒なイメージなのですが、その意味は、「神から使命へと召される」ということです。それは聖
職者など特別な役割へ召されることに留まらず、信徒にはすべからく固有の召命があると、いまの教会は考えています。そして召命に応えることは、完全な自由意志に基づかなくてはなりません。強制はあり得ません。
今年の3月21日の午後、文京区関口にある東京カテドラル聖マリア大聖堂でも司祭叙階式が行われ、6名の新しい司祭が誕生しました。この6名という数字は、いまの日本のカトリック教会では、大変多い人数です。この6名のうち2名は東京教区(東京と千葉県)で働く司祭、それ以外にはコンベンツアル・フランシスコ修道会から二人、レデンプトール修道会とパウロ修道会からそれぞれ一人ずつです。
実はいま教会は、世界的に司祭不足に悩んでいます。カトリック教会の中心にあるのは、特に日曜日にささげられるミサ(聖体祭儀)ですが、ミサをするためには司祭が必要なのです。なり手が少ないばかりか、養成するのに最低でも7年という時間がかかります。しかも独身を守らなくてはなりません。
昨年の統計で、世界には約13.7億人のカトリック信徒が存在し、ヨーロッパでは減少し、アフリカとアジアで少しずつ増加を続けています。これに対して司祭の数は約40万人で、毎年少しずつ減少しています。統計的には日本はほぼ40万人の信徒(海外から来られた信徒を入れるとほぼその倍以上)に対して約1,200名ほどの司祭がおりますので、司祭一人あたりの信徒数では世界平均を大きく下回ります。しかし日本社会全体の傾向を反映して、高齢化が激しく、後継聖職者の育成は日本の教会の大きな課題となっています。
副館長挨拶 副館長 平井利依子(ひらい りいこ)
4月より副館長に就任した平井利依子と申します。よろしくお願いいたします。
ロゴス点字図書館職員となって、この4月から5年目に入りました。点字図書館での業務は長く、ロゴスに入職する直前まで他の点字図書館で働いていました。振り返ってみると、図書館の世界で人生の大半を送ってきたことになります。
まず、ロゴス点字図書館とのかかわりについてお話してみようと思います。学生時代、東京都大田区に住んでいた私は、ロゴス点字図書館の前身である、カトリック点字図書館が誕生したカトリック洗足教会を訪れています。理由は覚えていませんが、とても親切に案内してくださったことを記憶しています。もちろん、カトリック点字図書館のことは知る由もありませんでした。ちなみに、四谷にあった頃の図書館、潮見に移転したての頃の図書館も見学をさせていただく機会がありました。
新人の頃、研修会で、2代目の西尾館長と出会った時は、神父様で点字も得意で、その熱意に衝撃を受けました。加えて、3代目館長の橋本氏、4代目館長の髙橋氏が議論を闘わせていたのを目の当たりにし、圧倒されるとともに刺激を受けました。当時のロゴスの職員(荒井さん、三井さん)とも全国組織のプロジェクト等で一緒に仕事をし、点字図書館の変遷を共有し
ました。とても勉強になり、楽しくかかわらせていただきました。カト点・ロゴスの皆さんは、私にとって尊敬できる長年の、大切なよき仲間でした。そんな存在のロゴス点字図書館に私が就職するとは夢にも思っていませんでしたが、さまざまな条件やタイミングに導かれたのではないかと思っています。
当館に就職すると、嬉しい出来事がありました。音訳校正ボランティアさんが、私が学生時代アルバイトしていた公共図書館の職員だったのです。懐かしさでいっぱいになりました。
個人的なことでは、母方の祖父母はプロテスタント信者で、洗礼を受け、教会によく通っていました。祖母からはよくキリスト教の話を聞いていましたので、ロゴスになじむには時間がかかりませんでした。
当館の「考える図書館」という方針は、図書館司書である私にとって、大変興味深いものです。このように特徴を前面に出した図書館にはあまり出会ったことがありませんでした。しかし、視覚障害者等にとって、このような図書館は必然ではないか、と実感しています。考案者の橋本氏は、「生きる意味を考える。これは個々の人間(盲人)にとり、不可欠の課題である。そのためには前提として人間と世界についての知識を確かめねばならない。そうした視点に立った選書方針を持った点図を作り、個々の盲人の人生の充実を支援することは十分な社会的有用性がある。(「考える図書館」論、『ひかりの軌跡-カト点からロゴスへ- 創立50周年記念誌』、
2003年より)」と述べています。日々、利用者の方々のレファレンスの対応は、目の前の事柄を解決することで必死ですが、常に「考える図書館」であるということを意識して、図書を通して生きる糧を見出せるよう、支援いたします。
ここで、今年度の事業計画をピックアップしてお伝えします。
2023年度はカトリック点字図書館から数えて、創立70周年を迎えるにあたり、式典を11月18日(土)、日本カトリック会館内のマレラホールで行います。改めて歴史の重みを感じ、理念を再認識しつつ、業務を遂行いたします。新型コロナウイルス感染症によって、業務の仕方が変化しました。良いところはそのまま生かし、今後状況をみながら、さらなる改善を進めていこうと考えております。
重点施策として「電子書籍製作促進」と「『フィラデルフィア会・声の文庫』テープ図書のデイジー化完了」をあげました。電子書籍の研修会は昨年度に実施しましたが、テキストデータを製作するボランティアの育成を軌道にのせ、その素材をテキストデイジー、点訳に活用できるよう、整えていきます。次にフィラデルフィア会・声の文庫のテープ図書のデイジー化を完了させます。社会福祉法人設立の際に3500タイトルのテープ図書を移管されましたが、ロゴスではこれらのデイジー化を一気に行う予算等はありませんでした。地道にボランティアの協力を得てデイジー化を行い、一大プロジェクトの完了がとうとう見えてきました。長い道のりでしたが、2023年度は何としてもデイジー化を完了させる予定です。
点字図書館業界は、さらに進んでいきます。新しい事業にも積極的に取り組みますので、これからもロゴスを支えていただければ幸いです。