ニュースレター「通信あけのほし」
当館支援者向けに年4回、ニュースレター「通信あけのほし」を発行しています。
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最新号の272号(2022年12月6日号)より巻頭言と館長挨拶を以下に掲載します。
巻頭言 久しぶりの海外出張 理事長 菊地功
先日、2年半ぶりに国際線の飛行機に乗りました。仕事の関係で、以前は結構な頻度で海外へ出掛けることが長年続いてきました。そこに、コロナ禍です。
2020年2月、感染が拡大する直前にミャンマーへ出掛け、乗り継ぎのバンコクの空港で大げさなマスクをしている欧米の観光客と思われる方々を見て驚きました。そのときから2年
半。そのバンコクの空港での驚きは、その後、日本でも当たり前の光景となり、海外出張もすべて取りやめとなりました。
各国の入国制限も撤廃され、日本への再入国も簡便になったこの10月、ある会議に出席するため、会場となったバンコクへ出掛けてきました。あれから2年以上経過したバンコクの空
港では、すでに欧米の観光客はマスクをしておらず、着用しているのはタイの方々や日本人など、アジアの人間ばかりでした。
さて、その2年半ぶりの海外出張は、3週間ほどにおよぶアジア司教協議会連盟(FABC)の創立50年を記念する総会でした。この連盟は1970年に創立されたので、実際には
2020年が50周年ですが、コロナ禍で2年延期の開催です。わたしは現在、この連盟の事務局長を拝命しています。
カトリック教会は世界中の教会を、基本的には「教区」という単位で治めています。教区の責任者は「司教」であって、ローマ教皇が直接に任命します。ですから、枢機卿や大司教や司
教などと肩書きは異なっていても、教区の主としての教区司教はすべからくローマ教皇に直結していて、互いに対等の立場にいます。その昔、教区司教は自分の教区の中では王様の如く振
る舞っていたこともあったのですが、さすがに現代社会ではそうした中世のシステムは立ちゆきません。1960年代に教会の現代への適応を目指して開催された第二バチカン公会議では、
同じ国の司教たちが集まって互いを支える連盟組織を構成することが決められました。これが現在、各国にある司教協議会です。
さらにアジアという単位で考えると、フィリピンをのぞいてキリスト教はどこでも少数派です。しかもアジアには長い伝統を持った他の宗教がたくさん存在し、様々な文化に彩られてい
る広大な地域です。この現実の中で、互いに支え合って歩むための組織として誕生したのがアジア司教協議会連盟です。カトリック教会の二千年の歴史の中で、まだ50年という若い組織
であるのはそのためですが、異なる現実の中にあるアジアの諸教会が、互いに支え合いながら歩み続けるために、これからも重要な意味を持つ組織であり続けるでしょう。
新しいパートナー 館長 西田友和
我が家に新しいパートナーがやってきました。「エル」という名前の男の子です。年は2歳10か月。好奇心旺盛で、まだまだやんちゃなところが残る、かわいくもあり、頼もしい盲導犬です。
失明して以来、単独で歩行するときには白杖を使ってきました。もちろん盲導犬の存在は知っていましたが、それは特別な人のための特別な存在であると、どこか自分とは関係ないもののように感じていました。
盲導犬に興味を持つようになったのは、駅ホームから誤って転落し、歩けなくなるほどの大けがを負ったのがきっかけでした。そのような事故にまさか自分が巻き込まれることなどないと思っていたのでショックで落ち込んでいました。その頃、「盲導犬を使ってみれば」と勧められ、盲導犬の体験会に参加しました。
盲導犬との歩行では人間が犬に指示を出し、それに従って犬が歩きます。一見すると犬が人を連れているように見えますが、正しくは人間の指示で犬が動いています。犬は路上の障害物をよけて歩き、道の角や段差があればそこで止まって次の指示を待ちます。その繰り返しを通して、目的の場所を目指します。人間の指示した方向を犬が理解して進んだり止まったりすることにも驚かされましたが、それ以上に感動したのは、犬と一緒にいるときの、他では経験したことのない心強さでした。白杖での歩行では、障害物にぶつかったり道に迷ったりしたとき、言い知れぬ孤独感と無力感に苛まれることがよくありました。誰かに手引きをしてもらう場合も、単独歩行時のストレスこそないものの、自分が連れられているという受け身な立場に引け目を感じたりしていました。
まさに「パートナー」という言葉がふさわしく、盲導犬との歩行は、いわば人間と犬との共同作業です。犬もその作業を一緒に楽しんで行えるよう訓練されていて、歩くことはいわば難しいゲームをクリアするようなものなのだそうです。
盲導犬は仕事をさせられるばかりでかわいそうという声を一部で耳にします。でも、実際はその逆で、ユーザーと歩けること、それがうまくいくことは、犬にとって代えがたい喜びであり、またそれはユーザーも同様です。
エルとのパートナーシップはまだはじまったばかりです。もちろんこれから大変なこともあるでしょうが、楽しみながら一緒に乗り越えていければと願っています。今後、イベントなどを通じて皆様ともお会いできる機会もあろうかと思います。その際は、ぜひ温かく見守っていただ
ければ嬉しいです。