「考える図書館」〜一人ひとりの心によりそって〜

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「通信あけのほし」277号を発行しました

支援者向けニュースレター「通信あけのほし」277号(4月16日号)を発行しました。
最新号の277号(2024年4月16日号)より巻頭言と館長挨拶を以下に掲載します。

  巻頭言 切り取られる現実   菊地功(きくち いさお)

 国際的な災害救援や人道支援の非政府組織(NGO)で世界一の規模を誇るのは、赤十字国際委員会(ICRC)だといわれています。そしてカトリック教会を母体とする国際カリタスが、世界第二位の規模であるともいわれます。
 昨年、2023年5月にローマで行われた国際カリタスの総会で、わたしは4年の任期でその責任者である総裁に選出されました。
 それぞれの国のカリタス組織は、その国のカトリック司教団によって設置されており、その国の司教団に報告する義務があります。同様に、国際カリタスは、定期的に教皇様に、活動を報告する義務があります。
 この一年間の国際カリタスの活動報告をするため、教皇謁見を申し込んでいましたが、2月の半ば頃に、教皇公邸管理部から、3月14日午前8時半に教皇執務室まで出向くようにと通知があり、慌てて準備をしてローマへ出かけてきました。
 3月14日の朝、国際カリタスの事務局長と通訳の職員を伴って、バチカンまで出かけました。今時は、謁見の許可証がメールで送られてくるので、随所に配置されたスイス衛兵にスマホの画面を見せながら、執務室に到達です。
 教皇様にお会いするのは、昨年10月のシノドス以来ですが、さらにお歳を重ねられたご様子です。加えて、この数日は、ウクライナ問題での「白旗」発言もあり、世界各界からの批判にさらされていることもあってか、かなりお疲れのご様子でした。
 本題です。この「白旗」発言に関してバチカンの広報局は、実際にはインタビューにおける前後の長いやりとりがあった中での発言の一部が切り取られ、そこだけがクローズアップされての騒ぎだと声明を出しています。たしかに発言そのものは不用意な比喩であったと思いますが、しかし肝心なのは全体像です。総合的に教皇フランシスコがウクライナの現状に対して、当事者に平和を実現するためには何が必要だと言わんとしているのか、全体像を捉えることが不可欠です。
 教皇様の発言に限らず、近頃は、インターネットの影響なのか、短い文章でのコミュニケーションが重視される傾向にあり、その分、切り取った一部が一人歩きして、全体像を総合的に見る視点が欠けているように感じます。しかし聖書の歴史をひもとけば、神は「時」の大きな流れの中で、様々な出来事を総合しながら、人類の救いを成し遂げて行かれました。救い主イエスにつながるのは、切り取られた現実ではなくて、総合的な視点からの「時」の理解です。

  新年度にあたって  館長  平井利依子(ひらい りいこ)

 学校や会社の多くは、4月~翌年3月を区切りとしています。新しい学校、クラス替えした新しい学級、転勤や配置換えなど、環境が大きく変わる時期です。自分自身のことではなくても、身内や友人が新しい環境に身を置くとなると、何だか気になります。ちなみに私の家は自営業だったので、親の転勤はなく、子供ながらに単身赴任の心配がなくてよかった、と思っていました。このような状況はなんとなく落ち着かない反面、新しい環境で頑張ろうとしている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
 当館も年度を区切りとして業務をしています。そのための作業が年明けから4月いっぱいまで続きます。3月までの予算の動きの見込みを確定したり、次年度の事業の計画を立てたり、それに連動して予算を決めたりします。また4月になると、前年度の決算、業務の統計など、振り返りの作業が入ってきます。細かい作業でもあり、大変なのですが、1年を反省する機会と、新しい事業など、これからの業務について考える機会を与えられ、日々追われている仕事を見つめ直す貴重な時間となっています。各担当職員と話し合い、それぞれの業務の状況を確認しながら、1年間のスタートの準備をします。
 今回は、その新年度の事業計画について少しご紹介します。
 2023年度はカトリック点字図書館から数えて創立70周年を迎え、皆さまに支えられてここまできたことを感謝し、2024年度、新たな10年のスタートを切りました。今年度の重点施策の1点目は、電子書籍製作の充実を図ることです。まず、ボランティアの協力のもと、テキストデータ化を進めます。テキストとは、文字コードだけで構成されたデータで、音声読み上げソフトを用いればパソコン等で読み上げることができ、視覚障害者等の大切な情報源となっています。その素材を生かし、検索機能等をつけるために編集したテキストデイジーを製作し、ソフトを使って自動点訳するなど、情報を速やかに利用者のもとに届けるよう努力します。1月に、国立国会図書館は視覚障害者等のために、247万点ものテキストデータを提供できるようにしました。今後、新たな情報ツールとなるテキストデータを利用者が使いこなせるように支援します。
 次に、テープでしか残っていない音源をデジタル化することを掲げました。テープは長期間保存していると、転写が起こったり、劣化して切れたりしてしまいます。調査したところ、利用者へ向けた新刊案内「ロゴスのほん箱」56号分、「通信あけのほし」84号分が、テープのみの音源でしたので、デジタル化し、貴重な財産として保存します。
 3点目は、ロゴスと同じ地域の類縁機関と連携していくことです。具体的には、図書館や博物館のような文化施設で開催される視覚障害者等向けのイベントの広報・PR協力、当日の参加や援助などです。当事者団体とも協力し、活発な普及啓発を行います。
 そのほか、継続事業として、図書館サービスや製作業務、ボランティアへのケアなども行います。また、チャリティグッズを通して普及啓発の促進にも努めます。そして、2021年以降開催していなかった「ロゴスの文化教室」を再開する予定です。改めてお知らせしますので、ぜひご参加ください。チャリティ映画会は、一般の映画館においても音声ガイドが用意されるようになり、また映画の主音声に音声ガイドを収め、デイジー編集した「シネマ・デイジー」が普及して楽しめるようになるなど、時代とともに環境が変化したこともあり、終了としました。しかしチャリティ映画会は支援者も参加することでロゴスの絆が築かれていく場でもありましたので、映画会に代わるそのような場を考えていこうと思っています。よいご提案がありましたら、ぜひロゴスまでお寄せください。今まで映画会に支援、参加してくださった方々に感謝いたします。
 少し堅い話になってしまいましたが、毎年、この時期になると業務の振り返りをして検証したり、反省したり、また利用者へどんなサービスをすればいいのだろうと考えます。1年間、事業計画に沿って、また新しいアイデアがあればチャレンジして業務に励みますので、どうぞよろしくお願いいたします。

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